『流星シネマ』吉田篤弘



今は暗渠となっている川に、かれこれ200年前、巨大クジラが迷い込んで来てそのまま命を落としてしまった、という伝説のある街のお話。
埋葬したクジラの背中に街ができたのだという言い伝えの通り、ある時、クジラの骨が発見されて…。
町のタウン誌の編集員の主人公・太郎を中心に、街の人々の交流が描かれる。

話は、クジラの骨が見つかり伝説が本当だった!という事実が明るみに出ても、大騒動になるわけでもなく淡々と進むわけなんだけど、登場人物のさりげない部分に、小さなスポットがちょっと当たるみたいな、まあ、吉田篤弘さんの小説はいつもそんな感じでね、とても心地よい。

中でも今回私のお気に入りは、タウン誌の編集室にある『ラ』の音がちょっとはずれている古いアップライトピアノを弾きにやってくる青年、バジ君。
静かな音色と歌声で聴いている人を眠りに誘ってくれるのだ。
歌詞はどこの国の言葉でもなく、バジ語。
なんとなく始まって、なんとなく終わるらしい。
彼のピアノを頭の中で想像しながら、こんなふうにピアノを弾けたら、いいなあって思う。

どこまでも自由で、

優しいピアノ…。

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